「つ…つっちー……」


「何?」


「あ…あのね……。」



「…三年間、ありがとう。」












迷いなんて少しもないから










中学校生活、三年間の中で


私は、土屋光という男を好きになった。





三年間でその人だけを思い続けたのよ?


すっごく一途じゃない?






卒業式の日、告白しようとした。


けれど、「好き」というたった二文字の言葉が言えなくて、


すっごく後悔した。




……否、今でも後悔してる。







卒業して、違う学校に通っているけれど


今でも、好き。


というより、他の人を好きになれない。








―――彼のことを忘れられなくて








だから、今度会って告白しようと決めた。


携帯電話を使って決めた、


今度会う日は、今週の土曜日。


聖楽公園で午後一時。


その日が、私の運命の別れ道。










時間って、すぐに過ぎるんだよね。


一週間なんてあっという間で、


すぐに土曜日になった。





公園まですっごく遠く感じたのに、


ついたら「アレ…もう公園?」って気分になった。











「あっ……。」



私の、長年片思いし続けてきた人は、


満開の桜の木下で、太い幹にもたれながら


ボーっとしてた。











「あっ…。久しぶりー。」


「うん…。久しぶりだね、つっちー。」




会うのは一ヶ月ぶりくらいかな…?


だけど確実に前に会った時より、背が伸びていて。





すっごく、かっこよくなったような気がする。







「…今日はね、言いたい事があるの。」


「なんだよ。真剣な顔して…」


「まじめな話なのっ!」





そうやって悪戯っぽく笑う顔も好きだけど、


今は、真剣に私の思いを聞いて?







 
「卒業式の日、言おうと思ってたんだけど……」




あの時は、きっとまだ迷ってたんだと思う。


告白するか否か…


だけど、違う学校に通い始めて『あの時告白しとけばよかった。』って


何度も思った。










だから今は――













――――――――迷いなんて少しもないから――






















「好き、ツッチーのことが。」







決心しちゃえば、ちゃんと言えるんだね。


こんなに簡単に、君への思いが。













「っ――――!?」





ふと、唇にやわらかいものが触れた。




ほんの一瞬の事だったけれど、


私の脳裏で何回も繰り返される


さっきの唇の感覚と、つっちーのドアップの顔。





「なっ……!」


「…俺も、ずっと好きだった。のことが。」


「っ………!!」






唇に手を当てた。


微かに残っている、つっちーの体温。














風が吹いて、桜が宙を舞って。





そんな中、つっちーは私に軽く口付けをした。



















「つっちー…けどさぁ、いきなりキスはないでしょ?」


「いや、嬉しかったから。」


「もし嘘だったら、どうするつもりだったのよ?」


「べっつに〜」







つっちーは顔を赤くして笑っていた。



私の顔も赤くなっているだろうなぁ。










「……。」


「ん?」





「ずっと、傍に居てくれよ。」



「……離れないからね。」

















風が吹いて、桜の花びらが宙を舞った。











私の春は今始まったばかり!



















                 ――END