「ヤベっ…遅れちまった……。」
人気の少ない廊下を全力疾走中。
ガッガッガッという俺の足音だけが、
静かな廊下に響く。
『ガラガラガラーっ』
薄暗い教室の中で、俺を引きつけたのは
机に腕を乗せて眠っている、アイツの姿。
キスしても夢から覚めない奴
「………寝てるし。」
待たせた俺が悪いんだけれど、
寝てるとなるとなー。
起こしちまうのも悪いし。
何より、もったえないだろう。
コイツの寝顔は…そうそう見れねーし。
「……写真とっとこ。」
ポケットから携帯を取り出して、
カメラモードに設定。
『カシャっ』
撮った写真を見てみる。
お、結構上手く撮れてる。
即、保存。
「スースー…」
「あー…暇になってきた。」
「スースー…」
「……幸せそうに眠りやがって。」
起こそうかな、とかスッゲー自己中心的な事を考えた。
けど、よ。寝るまで待たせちまった俺が悪いんだし。
起きるまで、待とうかな。
「スースー…」
「………あ。」
白雪姫は、王子様のキスで目、覚ましたんだよな?
俺が王子様なら、コイツはキスで起きるんじゃねーか?
「スー…」
「…………」
少しずつ、の顔に近づく。
の寝息が、俺の唇にかかる。
「んっ……」
「!」
起きたか!?
「…光……」
「!!」
えっ!?
起きてんのか?
「光………」
寝てる、みたいだな。
「どーしたんだよ。俺の姫。」
チュっと、少し触れるだけのキスをした。
「スー……」
コイツ、起きねぇ!
俺はコイツの王子様じゃないのか?
「光……大好き…だ……ょ……」
「っ!?」
初めて、の口から「好き」という言葉を聞いた。
いつも、言うのは俺からだからな。
寝言でも、嬉しい。
の、気持ち。
キスしても、夢から覚めない奴。
だけど、よ。
俺にとっては、大切な眠り姫。
「いい加減起きろよ。かえろーぜ?」
柔らかい髪に触れて、そっと撫でてやる。
「んっ……アレ?…光………?」
「オウ。」
「私…眠ってた?」
「そりゃーもう。」
「ごめん。帰ろっか?」
「オウ。」
別に、謝らなくてもいーんだぜ?
「大好き」って言ってもらえたしな。
たまには、悪くねーかも。
「何、にやついてんのよ。気持ち悪い。」
「うっせー…。なぁ、。」
「ん?」
「愛してる。」
そう呟くと、
顔を真っ赤にして俺の方を見るが愛しくて、
思いっきり、抱きしめたくなったり。
「…知ってんのよ!それくらい…。いつも…アンタに言われてるから。」
「何?照れてんの?」
「……五月蝿いっ!」
図星か。
ま、可愛いんだけどな。そーゆーとこも。
「光……。アタシもアンタに負けないくらい、アンタのこと好きだから。」
「っ!?」
不意打ちかよ。
反則だぜ?
「ほら!早くしないと置いてくわよっ?」
ソラは茜色で、
走って、の手を握った。
離さないように。
キスしても夢から覚めない俺の姫。
ずーっと、俺の傍に居ろよ?
俺は、ずっと、お前の傍にいるからよ。